平成15年度文化庁芸術団体重点支援事業
2003年6月 文学座アトリエの会

Just Business
- 商談 -

(『HOSPITALITY SUITE』by Roger Rueff)
ロジャー・ルーフ
添田 園子
演出 鵜山 仁
それぞれに違う世代を生きる3人のビジネスマン。
彼らはある日、大口の顧客獲得のためにホテルの一室でパーティを催すことになったのだが・・・。
アカデミー賞俳優、ケビン・スペイシーが自らプロデュース、出演し映画化(邦題「ビッグ・チャンス」)もされた作品がいよいよ本邦初演!


2003年6月26日(木)〜7月8日(火)
信濃町・文学座アトリエ
(ここをクリックすると地図が出ます)

公演情報 配 役 物 語 どんな舞台? チラシ拡大版
:出演:
小林 勝也石田 圭祐神野 崇


:スタッフ:
美術 …… 神田 真 | 舞台監督 …… 黒木 仁
照明
……
金 英秀
| 制作 …… 伊藤 正道
音響効果
……
望月 勲
| 票券 …… 松田 みず穂

【 公演情報 】

2003年
26 27 28 29 30
開演
時間
14:00 - - -
19:00 - - - - -
前売・予約開始●2003年5月24日(土)
料金 前売・電話予約3,500円/当日3,800円(全席指定・税込)
当日券は開演の3時間前より 03-3353-3566(文学座当日券申込専用) で承ります。
チケット取り扱い 文学座チケット専用0120−481034(10時〜17時30分/日祝を除く)
チケットぴあ0570−02−9988
お問合せ 文学座 03−3351−7265(10時〜18時/日曜・祝祭日を除く)
演劇制作部(担当:伊藤正道・松田みず穂)
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【 配 役 】
フィル …… 小林 勝也
ボブ …… 神野 崇
ラリー …… 石田 圭祐
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【 物 語 】
大口の契約を取ることを会社から任され、ホテルの一室で接待パーティーを開いたベテランセールスマンのラリー、フィル、そして新人のボブの3人のセールスマン。今宵の招待客の一番の大物は、アメリカ中西部最大の企業の社長ディック・フラーだ。だが、フラーらしき大物は結局現れなかった。意気消沈のラリーとフィル。ところがなんと、ボブがフラーと言葉を交わしたと言う。果たして、その商談の結末は・・・。
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「アメリカン・ビューティー」でアカデミー主演男優賞を受賞したケビン・スペイシーが自ら製作、主演した「ビッグ・チャンス」(99年製作)の原作……本邦初演!
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【どんな舞台?】
いくつもの偶然  添田園子

 昨年のお正月、私は本当によく映画を見ていました。といっても映画館に足を運ぶというのではなく、レンタルビデオ屋で借りてきた映画ですが。あの頃の私はまだ準座員2年目で、その3月には座員に昇格できるかどうかという微妙な時期、ある意味、自分のこれからをシビアに見つめるひとつのターニングポイントにいました。経験すること、考えること、選択すること、歳を重ねていくということ、今この時の自分の価値観。そういうことに行ったり来たり、ユラユラと思いふけっていました。あんなにたくさん映画を見ていたのは、きっといろんな物語の中のいろんな人の生活を見たかったからなのかもしれません。
 と、そんな時、この作品に出逢います。『The Big Kahuna』、邦題『ビッグ・チャンス』。私はこの物語に出てくる3人のビジネスマンに釘付けになりました。物語の内容は・・・・・・見てからのお楽しみということでここでは触れないようにします。映画を見終えて大満足した私は、原作の小説などがあるのなら是非読んでみようと作品について調べてみました。こういう物語を舞台でやれたらな、アトリエでやれたらなと思ったのです。するとなんと!もとは戯曲『Hospitality Suite』だということが分かりました。なるほど、そういえば映画も全てのシーンはホテルの一室の中だけで進み、特殊効果の映像とか大がかりなセットを使って大アクションといったものではありませんでした。あとで分かったのですが、映画に出演しているケビン・スペイシー(出演の他に製作総指揮もやっています)も本当は舞台でやりたかったのだけどスケジュールがどうしても合わず、だったら映画でやろうということになったそうです。そういうことが徐々に分かってくると、もういてもたってもいられなくなり、なんとか日本でもこの作品を舞台で上演できないものかとメラメラ燃えてきました。
 と、そんな折、アトリエ公演の企画募集がかかります。アトリエの会は(本公演も同じですが)文学座の中で企画や作品を募集して公演が決定されます。これは!と思い、『Hospitality Suite』を出すことにしました。私にとっては初めての企画提出、何をどうすればいいのか・・・・・・。出展者によるプレゼンテーションの日、どうしたらこの作品の良さを伝えられるか必死に考えてきたのも虚しく、極度の緊張と、皆さんにこの作品のことを知ってもらえるという興奮に舞い上がっていた私は、ただただ「本っ当に面白いです!是非アトリエでやりたいのです!!」と繰り返すだけという始末。さらに、ここで大きな問題になっていたのが戯曲台本がまだ手に入っていないということでした。映画があってもやはり舞台用の台本を読んでみなければというのは当然です。
 ところがここで、どうしたものかと頭を悩ませていた私に吉報が舞い込んできます。文学座の先輩、福田裕子さんが文化庁の研修でちょうどN.Y.におられ、なんとか戯曲が手に入らないものかと相談していたのでしが、ついに作者と連絡が取れて台本を日本に送っていただけることになったのです。なんというグッドタイミング!では早速台本を提出・・・・・・がしかし、英語の台本。日本語に直さないと提出できません。もう時間もなく「ならば!!」と自分で翻訳して提出することにしました。期限まであと8日。生まれて初めての翻訳に、朝から晩まで毎日毎日必死で取り組みました。英語を日本語に訳すなんて学校の授業以外でやったこともありません。でも、幸いなことに私は英語が本当に大好きで、いくら大変でもツライなんて全く思いませんでした。ただがむしゃらに翻訳を完成させ、ギリギリセーフで台本を提出したのです。その日の朝の、少しひんやりした生まれたばかりの空気と、興奮醒めやらぬあのなんともいえない気持ちは忘れることができません。
 こうして『Hospitality Suite』は見事(?)選考をパスし、『Just Business-商談−』としてアトリエで上演されることになったのでした。何かをつかみたい、でもどこか分からないユラユラしていた私の、ひょんなきっかけから始まった小さな願いが、いくつものビックリするような巡り合わせと繋がって、いま大きな現実となっています。ここまで本当にお世話になりました、裕子さん、ステファン、蔭山さん、鵜山さんへ感謝いたします。そして今回、あのがむしゃら翻訳の気合いをかっていただいたのか、翻訳を私に任せていただけることにもなりました。精一杯がんばります。楽しみたいと思っています!皆様もこの舞台を楽しんでいただけたらと願っています。

Businessの楽しみ  鵜山 仁

 ここ何年か、NHKのラジオ第2放送で、「ビジネス英会話」という番組を聞いている。以前は、これはきっとビジネスレターの書き方や、履歴書や契約書の書式等々、いわゆるオフィスワークの必要知識、技術の英語版を教授する番組だろうと、そんな先入観にとらわれて、とても近寄る気にならなかった。ところが実際放送を聞いてみてすっかり印象が変わった。番組の印象だけではない、「ビジネス」という言葉についての感じ方が一変してしまったのだ。
 Businessを英和辞典でひくと、「職業」、「商売」、「仕事」、「実務」、「営業」、また「企業」、「会社」、「店舗」、「のれん」、そして「用件」、「事件」、「本分」、「つとめ」、さらにはなんと演劇用語として「しぐさ」、「所作」、「表情」とある。じつに適応範囲の広い言葉なのだ。ちなみに広辞苑で「ビジネス」とひくと、「事務」、「実務」、「実業」、「商売上の取引」と、割りにそっけない。
 この語義の広がりの違いが、あるいは僕の先入観に影響を与えていたのかもしれないが、ともかく僕は「ビジネス英会話」という番組を通じて、Businessとは、いわば大人のコミュニケーションなのだということを教わった。
 われわれの経済活動、物の売り買いは、無論一種のコミュニケーションだ。はるかな昔、はじめは身の回りの生産物で用が足りていたのが、たくわえの不備、気候の不順、いろんな事情そうは行かなくなり、遠隔地の新しい事物とこちらの持ち物とを交換し合って、より広範な生活のニーズを満たすようになる。それに刺激されて今度は欲望のほうが多様化し、さらに新しい交換を求めるようになって・・・・・・と、このあたりは経済学の常識だろう。
 多様化した事物の交換を円滑にするための道具である「貨幣」と、情報の交換に不可欠な道具としての「言葉」が、そこでは大きな意味を持つわけだが、交換される事物と同様、交換するという活動それ自体にも実は大きな意味があって、このあたりが今回の芝居の出発点じゃないかと僕は考えている。
 見知らぬ大人同士のコミュニケーションの始まりは、しばしば仕事についての会話、ビジネストークである。さてそこで何を語るかというと、商売道具はもとより、今日の天気、政治、スポーツ、女房子供の話、趣味の園芸から宗教、それこそあらゆることを語るのだ。天気、政治、スポーツはそれ自体の存在価値に加え、語られること、話題として大きな存在価値がある。表向きは商品を売ることが主で、おしゃべりが従ということになっているが、そもそもその売ることの究極の目的はというと、案外これがコミュニケーションを作り出すためだとも言えるわけだ。女房子供も所詮は話のタネ、ビジネストークのために存在していると、そこまで言うと極論に過ぎるか・・・・・・しかし事象そのものと同様、それについて語ることが大切な人生の彩りであるという点で、ビジネストークはアートに、演劇に通じる。
 Just Business・・・・・・「所詮は商売の話」である。しかしこの何てこともない雑多な話題の背後に、そしてそれを語るビジネスマン、さらにそれを演ずる俳優たちの重なり合いの彼方に、のっぴきならない人生が顔をのぞかせている。
 舞台の上で語ることを職業として選んでしまった俳優という存在と、言葉によるコミュニケーションの、ある意味で対極にあるビジネストークと、この切り結びの妙が、「語る人生」の楽しさとははかなさを浮かび上がらせてくれればと、今から僕は楽しみにしている。
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  『Just Business―商談―』には新旧三人の営業(セールス)マンが登場します。このセールスマン という職業、アメリカの演劇や映画においてはかなりお馴染みの存在。車社会のこととて、スクリーンに展開するカーディーラーとの駆引きなど、またかと思うくらいです。セールスマンこそ、アメリカ経済の最前線で日々戦う尖兵であり、だとすればおそらく“時代の様相をあるがままに映し出す鏡”なのかもしれません。
  そんな男たちを描いた戯曲でまず第一に思い浮かぶのは、アーサー・ミラーの『セールスマンの死』。旅回りのセールスマンとして長年懸命に働き続けた主人公は、老境に至って仕事を奪われ、親子の断絶を味わい、絶望のあまり自殺します。1949年初演のこの作品は、機械文明に対する呪咀を表現主義的技法を用いて描いた傑作です。
  第二は88年と90年に文学座が上演した、デイヴィッド・マメット=作、江守 徹=訳・演出『グレンギャリー・グレンロス』。厳しい競争に駆り立てられている不動産会社の、家族を背負ったしがない中年男たちの物語で、心の結びつきをなくした現代社会の冷酷さが辛辣に描かれていました。

  そして今回の、ロジャー・ルーフ=作、添田園子=訳、鵜山 仁=演出『Just Business ―商談―』。カンザス州のウィチタにあるホテルの一室。大口の契約を取ることを会社から命じられ、スイートルームで接待パーティーを開いたベテランセールスマンのラリーフィル、そして今回が初仕事となるボブの三人。今宵の招待客の中で一番の大物は、アメリカ中西部最大の企業の社長ディック・フラーだが、結局フラーらしき人物は現われなかった。意気消沈のラリーとフィル。ところがなんと、その大物とボブが意気投合し、名刺まで貰っていたという。ベテラン二人は早速、別のパーティーにいるはずのフラーのもとへボブを行かせる。果たして、この商談の結末は……。
  とはいっても、実際の舞台にはパーティーのシーンはありません。その前後に、世代も立場も違う三人の男たちが交わす会話によって進行します。話題はビジネスのことから、セックス、宗教、生きる目的などにまで及びます。こうした会話を通してほぼ半日の間に三人が出会い、対立し和解し、互いの信頼を築いていく様子が淡々と描かれていくのです。

  『Just Business ―商談―』(原題「Hospitality Suite」)は、ルーフのデビュー作で、1992年にカリフォルニア州コスタメサのサウスコースト・レパートリー・シアターで初演。99年には、アカデミー賞を二度受賞している名優ケビン・スペイシーの製作・主演、ジョン・スワンベック監督で映画化(邦題「ビッグ・チャンス」)されました。そして、この映画に接して深い感銘を受けた演技部の添田園子が、原作の戯曲を探し出して翻訳し、このたびのアトリエ公演が実現したのです。
  ユーモラスで哀しくて心温まる会話劇の傑作。厳しい競争社会を行き抜く等身大の男たちのドラマ。鵜山 仁の演出、ベテラン小林勝也石田圭祐に新人神野 崇を加えた三人の競演に、どうぞご期待下さい。
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Just Business−商談−』は、3人のビジネスマンの商談の成り行きを描いた単なるビジネスドラマではなく、そろそろ老齢になりかかっている中年セールスマンの心の葛藤と、親子ほども年の違う後輩との関わりを描いたヒューマンの香り高いドラマです。
50代初めのフィルを演じる小林勝也は、今やアトリエの会にはなくてはならない存在です。昨年の12月アトリエの会『オナー』では、作家であった妻と美貌の若い編集者との間で心揺れる文芸評論家を演じ、高い評価を得ました。社交的で、エネルギッシュで、フィルよりいくつか若いラリーを演じるのは石田圭祐。ここ数年は『言葉ーアイヒマンを捕らえた男ー』(俳優座劇場)、『櫻の園』(新国立劇場)、『夢の裂け目』(新国立劇場)など外部出演での活躍が目立ちます。新人のボブを演じるのは、文学座でもまさに新人の神野 崇。昨年準座員になったばかりの期待の星のアトリエデビューです。
演出は鵜山 仁。演出家としての手腕は既に定評のあるところ。鵜山仁が文学座アトリエの空間で、このヒューマンなドラマをいかに描くか、どうぞご期待下さい。
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