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2004年4月 文学座アトリエの会

中二階な人々


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阿藤智恵
演出 高瀬久男


2004年4月16日(金)〜29日(木)
信濃町・文学座アトリエ

公演情報 配 役 物 語 どんな舞台?
:出演:
佐藤 淳・浅野雅博・石橋徹郎・粟野史浩
山像かおり・太刀川亞希・勝由美子


:スタッフ:
美術 …… 石井強司 | 舞台監督 …… 神田 真
照明
……
中山奈美
| 制作 …… 伊藤正道
音響効果
……
斉藤美佐男
| 票券 …… 松田みず穂
衣裳 …… 出川淳子 | ……
…… | ……
宣伝デザイン …… 森さゆ里 | イラスト …… オザワミカ

大道具協力 …… 夢工房
小道具 …… 高津映画装飾
照明協力 …… ステージ・ライティング・スタッフ
音響効果協力 …… 東京演劇音響研究所
かつら …… スタジオAD
ケーキ製作 …… 八重樫伊知子

【 公演情報 】

2004年 4
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
開演
時間
14:00 / / / /
19:00 / / / / / /

臨時会員券 前売・電話予約4,000円(予定)/当日4,300円(予定)(全席指定・税込)
学生2,500円(取扱い文学座のみ)
 

【 配 役 】
ナガタ …… 粟野 史浩
ハシモト …… 浅野 雅博
マツイ …… 太刀川 亞希
キノシタ …… 山像 かおり
タカギ …… 佐藤 淳
クボ …… 石橋 徹郎
ワタナベミユキ …… 勝 由美子

【 物 語 】
 大学の同級生だった男女6人が共同で暮らす一軒の家。
ある日、そこへ一人の若い女が訪ねてくる。
住人の一人に恋をした彼女の訪れで、6人の平穏な日々は少し揺らぎ、
だが、少し揺らいだだけで、また続いていく・・・。
  平成14年度文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞作品、待望の舞台化。
未来の姿がよく見えない今の時代に30歳という微妙な年齢を迎え、
考え込み、立ち止まりながらも生きていく、中途半端な「中二階」の人々の物語。
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【どんな舞台?】
私が『中二階な人々』を書いたわけ
阿藤智恵


 もの心つく前から、女ばかりに囲まれて育ちました。私の家族は母と三人の姉たち、途中から同居するようになった祖母の女性五人に加えて、雑種犬のチロ、黒猫のキャッスルまでがメス、対する男性といえば父一人という圧倒的少数。もちろん家の外に出ればおじさんたちや男の先生、男の子たちもたくさんいたのだけれど、彼らの姿は遠くの異民族のようにぼんやりとしていて、私の人生の中の存在とは思えなかったのです。小学校の修学旅行で、なんのはずみか女の子の群れの中をスッポンポンの男子が走り抜けていったことがあったが、いややわ、恥ずかしい、と何故みんなが華やいだ悲鳴をあげるのか、全く理解不能だったくらい、私は「オトコノコ」に縁がなかった。
 決して自らそのように選んだわけではないのに、行くところ行くところ、なぜか女性が大多数をしめ、中学で入部したバドミントン部、同学年の女子五十四名に対して男子五名、高校演劇部、女子五名に対し男子ゼロ、全体の男女比なら男子が半数以上を占めるはずの大学で選んだゼミまでが、ふたを開ければなんと十五名全員が女性……その頃には私も、どうやら自分が男性に縁がうすいらしいということに感づき始めておりました。
 しかしもとより男性を我が民族とみなさず、うかうかと少女時代を送ってしまった私です。ことの重大性に思いを致す先見の明もなく、演劇の魅力にどっぷりはまり、面白そうなところに片っ端から首を突っ込んですごすうち、事態はますます進んでいきました。
 七年所属した劇団をやめて入った加藤健一事務所の俳優教室、入所した当初は同期の半数をしめていた男性が秋の終わりには二名、翌春にはゼロになり、オーディションを受けて何公演か参加させてもらった演劇集団かもねぎショットでもお姉さまたちと楽しくすごし、その後ご丁寧にも女優二人が主宰するLa Compagnie “A-n”(ラ・カンパニー・アン)に参加してしまうに至って、いくらなんでもこれは、何か手を打つべきではないのか? はたと気づいたときには三十路を歩み始めていたのでした。
 何に手を打たなければならないのかといえば、「ドキドキしちゃって男の人と口がきけない」なんていう、うれしはずかし乙女心の処理問題では断じてなく、演出助手としてお世話になったTHE・ガジラの北海道公演で打ち上げ会場に向かうべく乗ったタクシー、後部座席で切れ長の目がすてきな俳優Oさんと、長い足をもてあます鐘下辰男氏にはさまれながらも、ただ行く先のジンギスカンに思いをはせるばかりの私にあきれはてた鐘下氏が「おまえさぁ、ちょっとは男にはさまれて恥ずかしいとか居心地が悪いとか思えよぉ」とため息をつくほどの、けど思わないものは思わないので悔し紛れに「ははは!そんなもの、鐘下さんには全然感じませんよ!」と言い切ってしまうほどのどうしようもない色気のなさ!
 かくして女性なら一度は夢見る(らしい)「今の境遇から私を救い出してくれる王子様」に何の興味も覚えず育った私は「男友達」という存在に切なる憧れを抱くようになりました。「ただの友だちだもん、何も感じないよね」などという、さばさばドライな、心の一部で付き合うような関係ではなく、お互いに魅力を感じつつ、認めつつ、ドキドキ、ざわざわ心が豊かになるような、そういう関係、すてきじゃありませんか?そんな人たちとの共同生活、体験してみたいと思いませんか?
 というわけで、木蓮の花が柔らかに咲き出した頃、この「中二階」という宙ぶらりんに居心地のよい空間に思いをはせ、そのルーツをたどっていたら、恥ずかしながら、幼少の頃からの個人的大問題に行きついてしまった次第でございます。とはいえ、いざ稽古が始まってみれば、「憧れ」が生きて動いているのを目のあたりにできるんですもの、実生活での問題などもはやどうでもよくなって、ひたすら初日が待ち遠しい、ココロときめく春なのです。
*     *     *
(あとう ちえ)1968年、大阪府生まれ。大阪大学文学部卒。
加藤健一事務所俳優教室、「演劇集団かもねぎショット」高見亮子氏の演出助手、「演劇企画集団THE・ガジラ」鐘下辰男氏の演出助手、「La Compagnie“A-n”」への参加等を経て、現在は劇作家・演出家として活躍中。
[受賞歴]平成13年度文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作(戯曲『セゾン・ド・メゾン〜メゾン・ド・セゾン』)、第22回世田谷文学賞小説部門第二席(小説『空と丘の間で』)。

中二階からの眺め
高瀬久男


 今の世の中、職業選択は自由である。つまり、自由に選んでも生きていけると思われる世の中だからだ。しかし、この自由というのが曲者だ。自由であるがゆえに決め手に欠ける。結局、これでなければいけないということも無く、職業を選択してしまい、いつしかそれが生活の支柱となり、嫌々ながらもしがみつき、こんなはずではなかったのにと嘆きつつも、なんとかそんな生活に生き甲斐を見出そうとする人がほとんどなのではないだろうか。または、いつか本当に自分のやりたい事に出会えるだろうと、定職に就くことなくバイトに明け暮れ、いつしか自分で起業でもしない限り仕事を得るのは困難な歳になりながらも、夢だけはいつまでも持ち続けようとする人。早々に自分の人生に折り合いをつけ、背伸びすることなく、出来うる範囲内で仕事を選び、余暇を大切に、穏やかな生活の中に幸せを見出そうとする人。そして、しっかり人生設計を行い、それに向かって準備万端怠りなく突き進み、結果、無事希望通りの仕事に就き、名誉もお金も得て、満足のいく人生を歩む人など。自由であるがゆえに人の生き方は様々だ。
 その昔、今ほど職業の選択肢が無かった頃、または転職など簡単に出来なかった頃、就職するということは人生の一大事であり、その後の生き方を決めることでもあった。何をやりたいかよりも、生きるために何をどのようにしなければいけないか、その方法を身につけることが重要であった。今もそれは変わらないと思うのだが、現実には、何をどのようにやりたいかが、まず先に立っているように思う。実際、仕事と同じく生き方の選択肢も増え、個性の尊重が叫ばれ出すと、まずは,自分にとっての仕事とは、と考えるのは当然のことだろう。まして、自分を殺して仕事に邁進したとしても、将来に希望が持てるとは限らない今の世にあっては尚更のことかもしれない。何をどのようにやるか、それは自由である。そしてやらないことも自由である。やらなくても生きていけるならそれに越したことはないのだが……。
 現在、フリーターの数は増え続けているそうだ。このままでは日本経済はいずれ衰退の道を辿るだろうという人がいる。では、フリーターが減れば事は収まるのか。まさか、そんな単純な話ではないだろう。漠とした不安を抱えつつ、いまだ自分の人生を決めかねる人。大学を出るには出たけれど、確たるものを掴めないまま、なんとなく流れのままに過ごしてしまっている人。モラトリアムを楽しんでいる人。これまた様々である。様々でありながら、彼らにもいつか決断の時はやってくる。たとえば親の死、経済的困窮、あるいは恋愛、結婚、その他もろもろ、あるきっかけがもたらす人生の選択。人の一生は、時に外的要素、人との関係によって左右されることがあるものだ。勿論、自分の思いによって選択されるにこしたことはないわけだが。
 さて、『中二階な人々』。平成14年度の文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞作品である。男4人、女2人、大学時代から10年以上、なぜか中二階のある家での共同生活。中二階に集う彼らは、闇雲に前へ進むことに、あえて待ったをかけ、まさに中途半端なところに身を置き、現代の時の流れに逆行するかのように、じっと立ち止まっているようだ。きっと立ち止まることによってしか見えないものを大事にしながら。しかし、いつか彼らにも、選択の時はやってくるのだろう。その時彼らが何を選択するのかは誰も知らない。ただただ、今現在、中二階にいる彼ら。
 経済効率から考えたら、決して生産的なことをしているとはいえない自分自身の事を考えてみると、自分の居所は、まるで彼らのいる中二階のようだ。そこからなら見えるものがある。あるから居る価値もあるのだろう。そう思う。
 いつか中二階のある家に住みたいものだ。

【急増するフリーター】
総務省の統計によれば、フリーターの数は年々増加の一途をたどり、1990年に183万人だったのが2001年には417万人に達したとみられている。これは福井県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、5県の総人口383万人を大幅に超えた数字となっている。
また社会全体の経済的損失について、税収が1.2兆円減少、消費額が8.8兆円減少、貯蓄が3.8兆円減少、という試算結果がある。ちなみに、我が国の2004年度の国家予算は、約82兆円である。
なお「フリーター」とはリクルートフロムエーが作った新語だが、公式統計に登場するほど社会に定着した。この統計上での「フリーター」は、15〜34歳の男女で、学生、主婦を除く、パート、アルバイト(派遣等を含む)および働く意思のある無職の人を指す。
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 4月アトリエの会上演『中二階な人々』は、タイトルの脇に揚げられているとおり、"平成14年度(第25回)文化庁舞台芸術創作奨励特別賞”を受賞した作品です。実に105編もの応募作品の中から三次にわたる審査を経て、見事その頂点に立ちました。新進劇作家の登龍門として多くの才能を世に送り出している同奨励賞ですが、作者の阿藤智恵さんは前年の第24回でも佳作入選を果していて、まさに前途洋々、その実力はすでに折紙付きと言えるでしょう。
 この『中二階な人々』と佳作三編を収録した日本劇団協議会発行「新鋭劇作集・第15巻」の巻末には、演劇評論家岩波剛さんによる「解説」があります。かなり長くなりますが、この作品に触れた部分を抜粋して次に引用させていただきます。
                    
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 一軒の家に男女六人が共同生活をしている。その中二階のリビングが舞台。かれらは大学の同級生で30歳、軽いノリで一緒に住みはじめて10年、そんな生活ヘンだよ、と外部から言われても、どうしてヘンなの?と答えるくらい、空気のように互いに必要な関係にあるようだ。ある日、男の一人を訪ねて若い女の子が現われ、変化のない退屈な日常にさざ波のような揺れをもたらす。出来事といえばそれくらいなものだが、その揺れが微妙な人間関係をかいまみせる。男の女の関係を越えた交友だが、ひそかな愛の陰影があり、ことあるごとに酒を飲んで騒ぐけれど、それぞれの孤独やあきらめをかかえていることが伝わってくる。人物をキャラクターで捉えない、図式にしない描き方だから、テンポの早い会話、わずかな動き、その行間から読みとるしかない。そこから共同生活の空気の密度のようなものが出てくる。(中略)
 すでに青春は過ぎ去り、30歳を折り返し点のように感じている。「これがやりたいことだったか」「このまま死にたくない」と思いながら、「俺、今の生活、気に入ってるもん。このままでいい」という中途半端なところに立ちどまってしまう。これが現実なのか。では作者はこれら「中二階な」連中を批判しているのか。どうやら、そうではない。その視線はむしろ温かい、もの悲しげである。
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 ところで、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞作品を文学座が上演するのは、今門洋子=作『苺ジゴロと一日花』(92年)、杉浦久幸=作『水面鏡』(96年)、竹本 穣=作『柘榴変』(01年)に続いて今回が四度目です。前三作と同様に、今という時代とその中で漂い彷徨う人々を独特の台詞術で見事に捉えた『中二階な人々』−同奨励賞の
選考委員でもある演出の高瀬久男に加えて、登場人物たちとほぼ同年代の演技陣がどんな舞台を創り上げてくれるのか、4月16日からの開幕が待たれます。

  ◆アトリエの会ご観劇料金の改定について
 四月アトリエの会『中二階な人々』より、三年間据え置いてまいりました ご観劇料金(臨時会員券)を<前売―4,000円/当日―4,300円>へと 500円値上げするとともに、新たに<学生―2,500円>を設定することに致しました。経済的な面でのやむをえない値上げではございますが、芸術創造の面では、アトリエの会50数年の歴史の中で培われてきた舞台創りをさらに充実させてゆく所存でございます。何卒ご理解と、一層のご支援をよろしくお願い申し上げます。
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