文学座は1937年9月に岸田國士・久保田万太郎・獅子文六こと岩田豊雄の3名の文学者によって創立されました。
創立宣言に「我々は、姑息と衒学と政治主義を排し、真の意味における【精神の娯楽】を
舞台を通じて知識大衆に提供したいと思います」とあります。
岸田作品の面白さは、登場人物の対話の裏にある本人も気づいていない気持ちが、
俳優の発する言葉を通して浮かびあがってくるところにあります。言葉と感情のズレ、
行間に漂うそこはかとないエロスは、「現代の教養ある大人」にとって、
どんなスペクタクルよりもスリリングな【精神の娯楽】となることでしょう。
劇団三幹事を始め、森本薫・三島由紀夫らの座付き作家によって磨かれてきた文学座の「物言う術」を最大限に駆使して、
「岸田國士戯曲賞」にも名を残す劇団創立者の残した作品を現代に問うことは、日本語の美しさを見直すこと、
ひいては人間をみつめ直す事につながると信じます。