文学座

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イントロダクション
作者より
   
   
 
麦の穂の揺れる穂先に
 

<作者より>

「戌井さんから、「今度は小津さんの映画をモチーフに一本書いてくれないか」と依頼があり、 すでに私は、『東京物語』をもとにして『東京ノート』という作品を書いているので、 次は『麦秋』と『晩春』から、素材をいいとこ取りしたような作品ができないかと考えた。 どちらも原節子さん演ずる若い女性の結婚を巡る物語で、それをどうにか現代におきかえて描けないかと考えた。 それぞれもう五十年以上前の映画で、その頃とは若い女性の社会的地位も結婚観も変わっているけれど、 家族の心配、周囲のやきもきは、位相を変えながら残っているはずで、 それを丁寧にすくい上げるような仕事がしたいと思った。 それさえできれば、あとは演出家と俳優さんたちにお任せすればいいと考えて戯曲を書いた。」