文学座

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イントロダクション
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美しきものの伝説
 


戦後現れた多数の劇作家の中でも、『明治の棺』『ザ・パイロット』などの問題作によって注目されていた宮本研が 初めて文学座の為に書下ろし、1968年に初演した『美しきものの伝説』。 衝撃の初演以来、多くの演劇人たちの心をつかみ、 繰り返し上演され語り継がれた名作が再び文学座公演として登場します。 "大逆事件"以来、閉塞の時代へと突入し「冬の時代」とよばれた大正期。 そんな時代にもすべてに挑戦的で、理想のため、未来のため、愛のため、 燃え尽きんばかりに時代を駆け抜けた《大正期の人々》の青春群像を通して、 宮本研が問う政治と演劇、芸術と民衆といった問題は演劇にまつわる問いかけのみならず、 時代背景や史実を超えて、混迷と不安の今を生きる私たちの心の奥底に眠る「何か」に語りかけ、 問いかけてくるにちがいありません。揺れ動く大正という時代の中で閉塞状況を打ち破ろうと必死に生き、 政治と演劇にかける若い男女を描いたこの戯曲の力強く美しいせりふは、現代でもなお魅力的であり、 その登場人物たちの情熱は、私たちの心を揺さぶります。近年でも新国立劇場やシス・カンパニー、 さいたまネクスト・シアターでの上演が記憶に新しいですが、 今回文学座ではこの作品を中堅から若手の俳優陣で挑みます。
伊藤野枝、神近市子、松井須磨子、平塚らいてう、大杉栄、辻潤、 久保保、沢田正二郎、荒畑寒村、堺利彦。 誰もが偉人ではなく、時代に異議申し立てをする若者だった。 40年ぶりに甦る伝説の舞台。それはノスタルジーではなく、 現代を生きる私たちを揺さぶり起こし、 私たちの中の青春を奮い立たせる。