文学座附属演劇研究所は、単に表面的な演技技術を学ぶ場ではありません。俳優とは何か、人間とは何かを問い続ける場所です。
演劇の世界では、「こうすればこうなる」と簡単に答えが出るわけではありません。状況に応じてどうするべきかを考える力が求められます。そのためにも、あらゆることに興味を持ち、自らの視野を広げることが大切です。どれだけ見て、どれだけ調べて、どれだけ考えたか。その積み重ねが俳優としての自立に繋がります。
若い皆さんには、何よりも舞台に立ち続け、経験を重ねることの重要性を伝えたい。自分の枠を超え、挑戦し続けることの楽しさを知ってもらいたい。舞台に立つことは、孤独な作業の連続かもしれません。しかし、その中で得られる充実感や喜びは、何ものにも代えがたいものです。
演劇の奥深さと魅力を信じる人は、ぜひこの道を歩んでください。文学座附属演劇研究所での経験が、皆さんの未来にとって大きな糧となることを願っています。

演劇研究所 所長
小林 勝也
文学座附属演劇研究所は、2025年に開設65周年を迎えました。
文学座では、「魅力ある俳優になるには、日常生活においても魅力ある人間でなくてはならない」という杉村春子さんの言葉が示すように、日々の生活や身の回りの出来事が表現の基盤となると考えています。表現者にとって、生活し、社会と関わることは不可欠であり、それが演技にも大きく影響を与えます。
そのため、研究生への生活面での相談やアドバイス、さらには日常で得た気づきをどのように表現へとつなげていくかをサポートする主事の役割は、ますます重要になっています。
近年では、研究生がキャリアプランを考えるための経験談や材料を提供し、職業的な自立を見据えた現実的なステップを考える対話の場を設けることも、重要な責務となっています。俳優という職業のあり方が時代とともに多様化する中で、文学座が培ってきた理念や実績が、研究生の将来において大きな支えとなることを願っています。
意欲あふれる若い力が、新たな表現を生み出し、演劇の未来を切り拓いていくことを心から期待しています。

演劇研究所 主事
植田 真介