文学座附属演劇研究所は、1961年、文学座の創立25周年の記念事業の一つとして開設しました。
文学座の俳優教育は、創立者の一人である岸田國士の方針で、フランスの国立音楽演劇学校(コンセルバトワール)のカリキュラムにならい、
セリフを発することから始まりました。そのセリフも、いわゆる「お芝居言葉」ではなく、「生活の言葉」、生活に根ざした言語表現を身につけることが求められます。
カリキュラムは実技を重視しながら、多様な現代演劇に対応できるよう様々な工夫を凝らしています。
一年目の本科では、週6日間の授業。さらに、年間3回の発表会と稽古場発表会も行い、文字通り、演劇漬けの一年間です。
本科卒業後、選抜されて研修科に進級すると、年間4回の発表会と劇団公演に出演する資格を得、
同時に文学座映画放送部を通して、外部の舞台公演、映像や声の出演の機会も与えられます。
研究所との出会いが、劇を作る事の楽しさ、面白さ、そして難しさを再認識できる機会となるはずです。
現代演劇の未来に挑戦しようとする、強靭な体力と柔軟な発想を持った若々しい人材を求めます。
2020年度は開講の時期が新型コロナウイルス感染拡大の時期とぶつかってしまい、開講が2ケ月遅れになるという開所以来初めてのアクシデントに見舞われてしまいました。
現在は講師の先生方、劇団関係者の協力を得て、感染予防対策を徹底しながら、授業を続けております。
しかし実際に人と人とが対面し言葉を交わし、身体と身体を触れ合わす事でしか成り立たない「演劇」の現場のこと…。三密を避けながらのレッスンにはなかなか難しいものがあります。
それでも演劇をすることの楽しさ、難しさを、身体いっぱいに体験してもらおうと創意工夫を重ねて努力を続けております。
未来に何が待ち受けているか分からない現代社会…。
演劇の未来を信じて、新しい演劇人の発掘と育成を目指して力を尽してまいります。

演劇研究所 所長
鵜澤 秀行
文学座附属演劇研究所は、2020年に開設60周年を迎えました。これまでに多彩な人材を輩出し続け、その歴史と実績には評価をいただいております。しかし、その功績が変化を阻む要素になっているのではないか。時代の流れと若者の感性に即した人材養成はどうあるべきか。
そんな想いから、この10年間、研究所では"改革"を意識して、カリキュラムや発表会のあり方など様々な点で工夫を続けてまいりました。
文学座附属演劇研究所は"自由"とよく言われますが、それは「尊重すること」と「主張すること」の両方が、講師と研究生の間で等しく認められてこそ成り立つものです。
今現在、尊重したい何か、主張したい何かを抱えていて、それを表現する意欲のある方は是非研究所の門を叩いてみてください。
歴史と実績に囚われない若い力が、これからの新しい表現と、演劇の明日を切り拓いていくことを期待しております。

演劇研究所 主事
植田 真介