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文学座公演  

『 一銭陶貨 ~七億分の一の奇跡~    

作:佃 典彦
演出:松本祐子
  
地方公演:神奈川県
日程: 2021年6月19日(土)~26日(土)

                


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 第二次世界大戦末期、金属不足に対応する窮余の策として「せともの」で製造された「一銭陶貨」。お上にさんざん振り回され、結局世に出ることのなかった「一銭陶貨」。
 現在、「ものづくり日本」というキャッチフレーズで職人の技が評価されています。事実、高い技術を持つ人々が日本の経済を支えてきました。そこには道を究めるというキレイゴトだけでは片付かない欲望や嫉妬や承認願望もまた渦巻く。
 技術の進歩や経済効果を支える人間の営為ーその愚かしくも愛おしい姿を、生活の中のユーモアを掬いあげることに定評のある佃典彦が描きます。演出は、『喝采』(加藤健一事務所)『罠』(俳優座劇場プロデュース)など劇団外での活躍も目覚ましい松本祐子。文学座でのコンビ第1作『ぬけがら』では、岸田國士戯曲賞(佃)・千田是也賞(松本)を受賞しています。

昭和19年、愛知県瀬戸。
加藤家は代々、陶芸家の家系で瀬戸の町では一目置かれた存在である。
加藤嘉男は一流陶芸家でかつては瀬戸の赤鬼と称される程の才能の持ち主だったが、今はただの酒好きで妻のトヨには全く頭が上がらない。
この家には二人の息子がいる。長男の和雄は陶芸の才能豊かで学校でも優等生、しかし今は戦地に赴いている。
一方、次男の昭二は幼い時の事故がもとで足が不自由、陶芸の才能にも乏しく、徴兵不合格の身でお国のためにもならない役立たずである。
そしてもう一人、三年前からここでお手伝いさんとして働いている秋代。賢くはないが、前向きなのが取り柄の娘である。

戦況が厳しくなり、陶芸の窯の燃料の石炭にも不足し、瀬戸の職人の中には代用品として、陶製の手榴弾を作り始める者もあらわれる。トヨは大事な長男を奪い、瀬戸の職人の仕事も奪いつつある戦争のことを憎んでいる。

そんな時、陶器会社の井上がある報せを持って来た。 金属不足を補うために大蔵省は金属貨幣に替えて陶器貨幣を発行することを決定、有田、瀬戸が製造地として選定されたというのだ。話を持ってきた井上も、割れない陶器のお金を作ることの難しさは重々承知しているが、上の決定には逆らえないので、加藤家に話を通そうとしたのだ。 しかし、トヨは「何がお国のためだ!」と猛反対。嘉男も、そもそも技術的に無理だと主張する。
ところが、その話を聞いていた昭二は違った。
「これを成功させたら兄貴を見返すことが出来る」
昭二は今までの鬱積の全てを陶貨作りにぶつけようとするが…。


佃 典彦
(つくだ のりひこ)

1964年愛知県名古屋市生まれ。劇作家、演出家、俳優。名城大学卒。 劇団B級遊撃隊主宰。きわめて突飛なシチュエーションを使い、ストレートかつリリシズムあふれる世界を、笑いでいろどりながら作品化する。 1987年の第3回名古屋市文化振興賞を受賞した『審判~ホロ苦きはキャラメルの味~』をはじめとし、読売演劇大賞優秀作品賞など多数の受賞歴を持つ。 戯曲のほかに、ラジオドラマ、テレビの脚本の仕事も多い。第50回岸田國士戯曲賞を授与された『ぬけがら』は文学座アトリエの会への書き下ろし。 また俳優としてテレビドラマ『半沢直樹』に出演し話題となった。





  松本祐子

2019年に作り上げた『一銭陶貨 ~七億分の一の奇跡~』がこの度、再演という新たな挑戦の機会を得たこと、本当に嬉しく思っています。そして同時に、この一年八カ月の間に世界が如何に大きな荒波を経験したかということに思いを寄せると、心がひりひりと痛みます。けれど大きな不安と闘いながらも、やっぱり私たち演劇人は作品を創り、観客の皆様とそれを共有するという営みを止めようとはしませんし、観客の皆様は様々なご不便を何とかやりくりしながら、芝居を見てそこから喜びを得るという欲望を持ち続けてくださっています。本当にありがたいことです。必要不可欠ではないかもしれないけど、心に喜びをもたらすものは、やはり私たちの生活になくてはならないものなのだという実感を信じて、これからも皆さまの心と演劇を通して接触したいと願っています。
『一銭陶貨 ~七億分の一の奇跡~』の作品世界も厳しい状況下で必死に生きてきた、そして生きていく人々を描いています。舞台は愛知県瀬戸市、かつて"せとものの町"として栄えた土地を舞台に、゛陶器で出来た割れないお金"という不可能に思えたモノを、自分の存在理由を懸けて作り上げた人々と、そのプライドを受け継いだ人々の物語です。人を何かに突き動かす動機は「お国のため」などではなくて、極々個人的なことです。ちっぽけな存在である個々人が、自分の夢や意地や愛や虚栄心や、かっこいい面も醜悪な面も全てをひっくるめて何かにひたむきに働きかけた時、奇跡は起きるのだと思います。そしてその営みの連なりが歴史を作って来ました。私たちも今、大きな変革の時を生きています。そんな私たちにエールを送れるような作品になるべく、愛をこめて作品を作り、お届けしたいと意気込んでおります。私たちが経てきた道とこれから進む道を愛おしく思えるように願っております。


大阪府生まれ。1992年文学座付属演劇研究所入所、1997年文学座座員に昇格。 1999年文化庁在外研修員として1年間ロンドンで研修。 文学座内外で様々な種類の作品を演出。2002年『ペンテコスト』の上演に対して第9回湯浅芳子賞受賞。 2006年『ぬけがら』、『ピーターパン』の演出で第47回毎日芸術賞の千田是也賞受賞。 2020年『ヒトハミナ、ヒトナミノ』『スリーウインターズ』の演出で第54回紀伊國屋演劇賞個人賞、第27回読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞。 『スリーウインターズ』は読売演劇大賞優秀作品賞、第12回小田島雄志翻訳戯曲賞、第7回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞も受賞。 2021年『五十四の瞳』の演出で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。 日本演出者協会理事、桜美林大学、明治大学非常勤講師。


     

鵜澤秀行

中村彰男

高橋ひろし

上川路啓志

奥田一平

奥山美代子

髙柳絢子

平体まひろ

 

□スタッフ
美術:杉山 至 照明:賀澤礼子 音響:今西 工 衣裳:宮本宣子 
舞台監督:加瀬幸恵 演出補:的早孝起 制作:前田麻登
宣伝美術:Koichan

 

 下記の公演は「全国演劇鑑賞団体連絡会議」加盟の各地鑑賞団体(会員制)による主催公演です。
 各公演については右欄のお問合せ先にご連絡をお願いいたします。

  2021年6月   

  
月日 会館名 主催団体 tel
6/19 藤沢市民会館 大ホール NPO法人 藤沢演劇鑑賞会 0466-24-1747
6/20 平塚市中央公民館 ひらつか演劇鑑賞会 0463-24-3265
6/21、22 月・火 エポックなかはら 演劇鑑賞会
川崎市民劇場なかはら
044-455-7950
6/24 茅ヶ崎市民文化ホール 大ホール NPO法人 茅ヶ崎演劇鑑賞会 0467-51-6005
6/25 鎌倉芸術館 大ホール NPO法人 鎌倉演劇鑑賞会 0467-46-4042
6/26 幸市民館 川崎さいわい市民劇場 044-244-7481

文学座 03-3351-7265 ( 10:00→18:00日祝除く )
〒160-0016 東京都新宿区信濃町10